日本鼻科学会会誌
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原著
副鼻腔手術を行ったIgG4関連眼疾患
中西 わか子内山 美智子高岡 美渚季川脇 和世物部 寛子
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2019 年 58 巻 2 号 p. 187-195

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抄録

IgG4関連疾患は全身臓器や器官にIgG4陽性リンパ形質細胞浸潤による病変がみられる一連の病態で,その中には比較的稀であるが眼疾患,副鼻腔疾患も含まれる。今回眼科より精査を依頼され,両科で診断に苦慮し,当科で生検を施行したIgG4関連眼疾患2症例を経験したので報告する。

症例1 60歳男性。主訴は右視力低下,右眼球突出。副鼻腔CT,MRIでは両側の汎副鼻腔炎と,両側内下直筋の腫脹を認めた。右視神経炎による視力障害が進行し,緊急にプレドニゾロン(PSL)20mgの内服が開始された。1週後にESSを施行したがすでに副鼻腔粘膜は正常化していた。その後PSLの減量とともに視力悪化,眼球突出が再燃し,PSLの投与が反復された。数回の副鼻腔粘膜の生検を行ったが炎症所見は乏しく病理学的確定診断は得られなかった。血清IgG4を測定すると264mg/dlと上昇を認め,臨床経過からIgG4関連眼疾患,視神経炎として長期的なPSLの投与を再開し,症状のコントロールを得た。

症例2 44歳男性。主訴は左眼球突出,複視。副鼻腔CT,MRIにて外眼筋肥大,左優位の両側三叉神経第2枝腫瘤,さらに両側軽度の涙腺腫脹を認めた。血清IgG4は864mg/dlと高値。確定診断目的で左上顎洞根本手術による腫瘤切除術を施行した。病理診断でIgG4関連疾患の診断に至った。ステロイドの内服治療により良好な経過を経ている。

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