日本鼻科学会会誌
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原著
入院管理を要した鼻出血症例206例の検討
梅本 真吾立山 香織渡辺 哲生平野 隆鈴木 正志
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2019 年 58 巻 2 号 p. 243-249

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抄録

1996年1月1日から2017年4月30日までの21年4ヶ月間に,大分大学医学部耳鼻咽喉科にて入院加療を行った鼻出血症例について検討した。該当する症例は206例(男性141例,女性65例)で平均年齢は62.6歳であった。また冬季から春季に多く,夏季には少ない傾向にあり,103例(50.0%)が時間外の受診であった。

何らかの基礎疾患を有する症例は137例(66.5%)であり,高血圧が96例(46.6%)で最多であった。また易出血性薬剤内服症例を42例(20.4%)に認めた。出血部位は,不明であったものが58例(27.2%),出血点が判明したものの中では鼻腔後方が最多で57例(26.8%)存在した。

治療法は主にガーゼパッキングや電気凝固が用いられているが,近年は,電気凝固,蝶口蓋動脈切断術を施行する症例が増加する傾向にあり,ベロックタンポンやバルーンを施行する症例は減少する傾向にあった。治療法変遷の要因としては,近年硬性内視鏡の発達に伴い鼻腔後方の出血においても的確な処置が可能となったことが考えられる。

入院加療後の再出血症例は30例(14.6%)であり,そのうち17例(56.7%)の症例で入院時に出血点が不明であるか,出血点を誤認していた。再出血例では出血点の誤認が原因となり得るため,必要に応じて硬性内視鏡を用い,出血点を確実に同定した上で明視下止血処置を行うことが重要と考えられる。

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