日本鼻科学会会誌
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原著
外傷性嗅覚障害における受傷から受診までの罹病期間についての検討
赤澤 仁司長井 美樹
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2023 年 62 巻 1 号 p. 143-147

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抄録

【はじめに】外傷性嗅覚障害とは頭部・顔面外傷に伴い,脳実質の損傷等により生じる嗅覚障害である。予後因子の1つとして,受傷から受診までの罹病期間が報告されているが,その期間について検討されている報告は少ない。そこで,今回我々は外傷性嗅覚障害における受傷から受診までの罹病期間について調査し,その調査結果を踏まえて,罹病期間に影響を与えた因子についても検討したので,報告する。

【対象と方法】2015年7月から2020年12月までの間に堺市立総合医療センター耳鼻咽喉科・頭頸部外科を受診し,外傷性嗅覚障害と診断された患者21名を対象とした。対象の受傷から受診までの罹病期間や,その期間に影響を与えた因子等について後方視的に調査した。

【結果】受傷から受診までの罹病期間は,0か月から23か月に分布しており,中央値は5か月であった。受傷から嗅覚障害の自覚までの期間については,8例で受傷2か月以降に嗅覚障害を自覚しており,受傷後直ぐには嗅覚障害を自覚していなかった。また,嗅覚障害自覚後に他診療科で無治療のまま経過観察とされていたために受診までの期間が延長した症例も存在していた。

【結論】頭部・顔面外傷患者は自覚症状がなくとも嗅覚障害を合併している可能性があることを念頭に置き,診療にあたることが外傷性嗅覚障害の早期発見に繋がる。耳鼻咽喉科のみならず,頭部・顔面外傷患者と関わる診療科へ外傷性嗅覚障害の病態等について啓発していくことも受傷から受診までの罹病期間を短縮することに寄与すると考える。

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