日本農村医学会雑誌
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維持血液透析患者における心電図異常と動脈硬化
倉持 元矢嶋 晃仁
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2004 年 52 巻 5 号 p. 837-842

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抄録

近年, 医学的知見および透析技術の進歩による透析患者の長期生存に伴い心血管系合併症が増加し, 現在透析患者における罹患率および死亡率の主要な原因となっている。この心血管系合併症には動脈硬化の進展が深く関与していると言われている。そこで今回, 血液透析患者においてみられた心電図異常と動脈硬化の進展度との関係および動脈硬化の臨床的促進因子との関連性について検討した。PWV実測値は心電図異常が認められた虚血性変化(I)群 (1,993±99cm/s), 左室肥大(L)群 (2,103±120cm/s), 不整脈(A)群 (2,015±120cm/s), 伝導障害(C)群 (2,014±119cm/s) では, 正常(N)群 (1,627±69cm/s)に比べて有意に高値であり, 拡張期血圧にて補正した値でも各群ともN群に比べて有意に高値であった。また血清CRP値は各群ともN群に比べて高値をとる傾向が認められた。臨床的に動脈硬化の促進因子といわれている糖尿病, 高血圧症, 高脂血症, 喫煙および胸腹部大動脈石灰化の合併頻度においては, 糖尿病および高血圧症の合併頻度は各群ともN群に比べて高い傾向が認められ, 特に高血圧症の合併頻度ではI群 (66.7%), L群 (50.0%) およびC群 (55.6%) ではN群 (16.7%) に比べて有意に高値であった。これらの結果から, 維持血液透析患者における心電図変化は動脈硬化性病変の進展と関連しており, 動脈硬化性病変の促進因子のうちで特に高血圧症は, 心電図変化に強く影響を及ぼしていることが示唆された。

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© 2004 一般社団法人 日本農村医学会
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