日本農村医学会雑誌
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原著
日本における農薬中毒(障害)臨床例全国調査(2001~03年度)
西垣 良夫松島 松翠永美 大志大浦 栄次矢島 伸樹浅沼 信治臼田 誠
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2005 年 54 巻 2 号 p. 107-117

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抄録

 日本における農薬中毒(障害)の概況を把握し,その予防対策等を明らかにするために,農薬による健康障害を惹起して日本農村医学会会員の医療機関等を訪れた症例について,調査を行なった。
 2001~03年度に農業用化学物質に起因する農薬中毒(障害)の症例が,36機関から194例報告された。農薬中毒(障害)発症に関わる農薬曝露の事情は,自殺が74%を占め,散布中(14%),誤飲・誤食(7%)などが続いていた。
 自殺を原因とする症例では,男性がやや多く(52%),年齢構成では中高年が多かった。臨床症状の型は,ほとんどが急性・亜急性中毒(98%)であり,原因農薬は,有機リン系殺虫剤(39%)が最も多く,ビピリジリウム系除草剤(23%)などが続いていた。その転帰は,パラコート含有除草剤による中毒が極端に悪く,80%以上が死亡していた。
 散布中,準備・片付け中などの曝露条件による農薬中毒(障害)についてみると,男性が70%を占め,年齢構成では,中高年が多かった。診断名では,急性・亜急性中毒(39%)が半数以下となり,急性皮膚炎(33%),化学熱傷(14%),眼障害(11%)の比率が大きくなった。曝露された農薬としては,有機リン系殺虫剤(21%)がやや多かったものの,多様な農薬が関与していた。曝露の要因と考えられる事項は,防備不十分(44%),慣れ(19%),知識不足(14%),本人の不注意(12%)などであった。

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© 2005 一般社団法人 日本農村医学会
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