2005 年 54 巻 4 号 p. 661-666
本研究ではヒトのストレス緩和に果たす咀嚼刺激の機能的有意性をfMRIを用いて検討した。先ず不快な音刺激(ストレス音)を与えた時の脳賦活部位を同定し,次いでこの賦活が咀嚼運動(チューイング)によってどのように影響されるか調べた。またストレス関連物質であるカテコールアミンとACTHの血中濃度を分析した。チューイングは適度な硬度を有するガムベース(Xタイプ,ロッテ)を使用して行なった。その結果,ストレス音刺激によって扁桃体と前頭連合野腹側部が有意に賦活された。またカテコールアミンとACTHの血中濃度の僅かな上昇が認められた。しかし脳と血中に見られたこれらのストレス応答はチューイングにより抑制された。したがって,咀嚼刺激はストレス軽減ためのツールになることが示唆された。