2007 年 56 巻 4 号 p. 624-631
前立腺癌が疑われ,生検前にMRI検査が施行された91症例中37症例に癌が認められた。生検をコントロールとしてMRIの診断能を検討するとaccuracy 0.84,sensitivity 0.95,specificity 0.76であった。拡散強調画像が撮像できた26症例 (前立腺癌14症例) においてapparent diffusion coefficient (ADC) 値とprostate specific antigen (PSA) 値は有意に逆相関を認めた。正常辺縁域の平均ADC値は1.51±0.20×10-3mm2/sec,正常中心域の平均ADC値は1.47±0.12×10-3mm2/sec,前立腺癌部の平均ADC値は0.97±0.23×10-3mm2/secであり正常辺縁域と前立腺癌部においてp<0.001の危険率で有意差を認め,前立腺癌においてADC値は低下した。平均ADC値とGleason scoreの関係は相関を認めなかった。しかし,Gleason scoreを6以下と7以上の群で検討するとGleason scoreが6以下の群では平均ADC値は1.11±0.20×10-3mm2/sec,7以上の群では0.81±0.19×10-3mm2/secでありp<0.05の危険率で有意差を認めた。Gleason scoreが高いほどADC値が低下する傾向がみられた。
今回の検討でMRI検査は前立腺癌描出に有効であり,生検前にMRI検査を施行することで系統的生検 (辺縁域左右底部,中部,尖部6か所,移行域左右2か所の計8か所) のみならず標的生検 (MR画像にて癌を疑われた部位を注意深く穿刺する) も可能になり,生検の診断能の向上にもつながると考えられた。