2008 年 57 巻 2 号 p. 59-65
小児特発性血小板減少性紫斑病 (ITP) 87例の臨床的検討を行なった。初発時の臨床像として,発症年齢は0~4歳が71.3%,血小板数は1×104/μl未満が49.4%と,多くの症例が年少児で著しい血小板減少を伴っていた。初発時治療は,大量グロブリン療法が60例 (69.0%),ステロイド療法が10例 (11.5%),無治療が17例 (19.5%)であった。血小板数2×104/μl未満の症例では90%以上が治療を受けていたが,2×104/μl以上の症例では無治療観察が多かった。頭蓋内出血など重篤な出血はなかった。慢性型の頻度は17例 (19.5%) であった。慢性型の平均年齢は6歳3か月で,急性型 (2歳8か月) より有意に高かったが,性別や血小板数や初発時治療では有意な差はなかった。慢性型と診断された症例でも35.3%はその後血小板数が正常化した。現在も5×104/μl未満の症例は全症例の3.4%,慢性型の17.6%で,小児ITPの生活の質を含めた予後は良好であった。Helicobacter Pylori (H. pylori) 感染が認められたのは慢性型の7.1%,急性型の5.3%で,除菌療法なしでも血小板数は改善しており,小児ITPにおけるH. pylori感染の関与は低かった。