日本農村医学会雑誌
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原著
平鹿総合病院における食道癌診療
——その現況と今後への課題——
平山 克佐々木 司郎齋藤 礼次郎塚本 茂樹林 雅人
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2011 年 59 巻 5 号 p. 551-561

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抄録

 秋田県厚生連平鹿総合病院 (以下,当院) において診療を担当した最近12年間の食道癌症例を網羅的に集積し,417例のデータベースを構築して検討を行なった。当院は,秋田県の食道癌診療の約10%を担当していると類推可能であった。症例の66%は他医療機関からの紹介であり,当院が地域の中核病院として機能していることが示された。他方,健診や人間ドックによる診断症例は9.6%と少ない結果であった。根治的治療を目指すことが出来た症例は75%であった。診断確定後は98%において自院で治療が行なわれた。施行された治療内容では,平成14年までは手術治療が多く,平成15年以降は化学放射線療法が増加していた。また,根治を目指した症例の91%が当初の治療を完遂しており,そのCR率は73%であった。根治的治療施行例の遠隔成績は,他施設と比較しても遜色のない成績であった。さらに,健診や人間ドックによる診断例の遠隔成績は外来での診断例等と比較して有意に良好であった。今後の治療成績の向上には,このカテゴリーの症例を増加させることが近道かもしれない。再発は治療後1年以内が最も多く,殆どの再発は2年以内であった。当該期間における綿密なfollow upが必要である。一方,死因の検討では根治を目指した症例の中で原病死は66%に留まり,他病死・他癌死が34%を占めていた。即ち,follow upにおいては,対象が高齢者であることを鑑みて,再発のみでなく慎重な全身管理が肝要である。

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