抄録
Gonadotropin-Releasing Hormone誘導体製剤 (以下,GnRHアナログ) は子宮内膜症に対する偽閉経療法として婦人科領域では広く使われている薬剤である。GnRHアナログ投与中は無月経状態となるので月経に伴う骨盤痛は回避できるが,更年期同様に低エストロゲン状態にさらされるので副作用として更年期症状を被る可能性がある。ほとんどの症例はGnRHアナログを中止する必要のない軽度の症状ですむが,時に重度の神経・精神症状の副作用を発現することもある。今回,直腸子宮内膜症でGnRHアナログ投与後にうつ病となり精神科病院で管理入院を必要とするほどの重度のうつ症状を呈した症例を経験したので報告する。さらにこの症例はGnRHアナログから黄体ホルモン薬であるディナゲストに変更後,うつ症状はすみやかに軽快し,直腸出血のコントロールも継続して確保され腸管子宮内膜症へのディナゲストの有用性が示された1例でもある。