2013 年 61 巻 4 号 p. 649-656
症例は70歳代女性。前医で右腋窩悪性線維性組織球症,胸腔内浸潤と診断された。サイトカイン産生腫瘍が疑われ,出血による血小板減少と輸血による黄疸がみられた。当緩和ケア病棟転院時の血小板数は1.9万/μl,総ビリルビンは6.4mg/dlで,各種予後予測ツールでの予後は日単位であった。転院後は緩和ケアでの薬物療法を中心に行ない,輸血は行なわなかった。経過中,黄疸と血小板数は改善し,5か月以上生存できた。自験例が予後予測と異なり月単位で生存しえたのは,①出血がなく血小板数が自然回復した,②輸血の副作用の黄疸が改善した,③少量であったが経口摂取が長期間可能であった,ことが要因と考えられた。緩和ケア領域では,予後予測と大きく異なる症例が時折みられ,症状や状態に応じた薬物療法やケアを行なうことが肝要である。