2013 年 61 巻 4 号 p. 657-665
近年,エンゼルケアの重要性が認識され,多くの検討が重ねられている。筆者らはエンゼルケア研修会での学習会後,新しい院内マニュアルを作成したが殆ど活用されず,旧来の先輩からの伝承や看護学校で学んだ方法で死後の処置が実施されていた。そこで,このマニュアルにそった処置の周知と実践を目的として,病棟スタッフを出演者とした実演学習会の開催とその撮影によるDVD教材の作成,さらに,教材を用いた学習会により,スタッフの意識と手技の向上を図った。参加したスタッフ22名を対象とした,学習会前後のアンケート調査により,その効果を検討した。その結果,ほとんどのスタッフはマニュアルを読まずに旧来の死後の処置を行なっていたが,学習会後には73%が新しいエンゼルケアを,また59%がマニュアル通りに実施できるようになり,全員のエンゼルケアに対する意識が向上したことがわかった。この効果は,シミュレーションとDVDを用いたことによりイメージがつかみやすくなり,結果として意識と手技の向上に結び付いた事によると思われる。またDVD教材は何度も使用できる効果的な伝達学習のツールであり,今後の勤務異動後や新人スタッフの教育において継続的に利用可能である。一方,処置の充分な時間を持ちえたとの回答は59%にとどまり,多忙な日常業務の中でどのようにして良いエンゼルケアを提供するかが課題であることがわかった。
また,今回の取り組みは,院内の標準的な死後のケアとして取り入れるなど評価され,新人教育への組み入れや必要な物品購入に結びついた。
今後,さらなる院内スタッフ全体の意識向上が期待できる。