日本農村医学会雑誌
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看護研究報告
転倒・転落予防への取り組み
佐藤 早百合伊藤 恭子腰高 秋子小林 美和佐藤 まゆみ浅野 ゆかり守山 浩子太田 佳奈
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2013 年 61 巻 5 号 p. 726-731

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抄録

 当院における平成21年度のインシデント・アクシデント報告件数は417件であり,そのうち入院中の転倒・転落によるものが155件と最も多かった。これを受け,平成21年11月に医療安全委員会のプロジェクトチームとして立ち上げた,転倒・転落予防ワーキンググループ (WG) の取り組みによる,転倒・転落によるインシデント・アクシデント報告件数の減少と,転倒・転落発生率の減少効果について検討した。
 本WGは,薬剤師1名,理学療法士1名,看護師5名の合計7名より成り,院内の転倒・転落予防の推進と,患者の安全と医療の質の向上を目的としている。WGの具体的な活動は,転倒・転落アセスメント・スコアシートの見直し,危険度別予防対策の見直し,職員に対する教育研修,及び予防対策の実施状況を検証する医療安全ラウンドである。
 WGによる1年間の介入の前後を比較した結果,入院中の転倒・転落によるインシデント・アクシデント報告は,155件から,108件に減少し,重症事例 (レベルⅢ) の報告は5件から3件に減少した。転倒・転落発生率は2.19‰から1.56‰と減少がみられた。
 WGの活動により,転倒・転落予防対策のシステムの強化と,職員への教育・研修を行なった。その結果,職員の安全に対する意識が高まり,転倒・転落によるインシデント・アクシデント報告件数の減少と転倒・転落発生率の減少につながる結果が得られたものと考える。
  転倒・転落発生率 (単位 ‰ パーミル)
    =期間中に発生した転倒・転落件数/期間中の入院患者の延べ人数×1,000)

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© 2013 一般社団法人 日本農村医学会
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