日本農村医学会雑誌
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原著
80歳以上の高齢者乳癌の検討
原内 大作宇山 攻島田 良昭
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2013 年 62 巻 1 号 p. 1-8

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抄録

〔目的〕高齢者乳癌患者の治療は標準治療と異なる選択をすることも多く,また合併症や余命が短いことを理由に患者側からの治療拒否も珍しくない。今回,我々は当院で経験した高齢者乳癌症例を基に適切な治療法を検討した。 〔方法〕80歳以上の高齢者乳癌患者12例を対象に,術前検査,手術方法,病理組織検査,術後補助療法を検討した。 〔結果〕術前検査は,マンモグラフィ,超音波検査,CT検査,乳房MRIと穿刺吸引細胞診を行なった。組織検査において局所麻酔下の生検は同意を得るのに説得を要したが,超音波ガイド下針生検は患者側の抵抗感もなく行なえた。手術は,前半の症例にはリンパ節郭清を伴う全乳房切除術を行なっていたが,後半の症例には乳房部分切除術やセンチネルリンパ節生検などの低侵襲手術を行なった。病理組織検査結果は11例が浸潤癌であり,ホルモンレセプターも11例で陽性であった。術後補助療法は,内分泌療法とフッ化ピリミジン系薬剤の内服投与を行なった。乳房温存手術後の残存乳房への照射は,内分泌療法を行なうことで省略した。結論:高齢者は,手術,化学療法,放射線治療に対する拒否感が強かったが,適応があれば乳房部分切除術,センチネルリンパ節生検やホルモン療法などの低侵襲治療を提案することで根治的治療が行なえた。高齢者というだけでリンパ節郭清や術後補助療法を省略するのではなく,乳癌診療ガイドラインに基づいた根治的な低侵襲治療を考慮すべきである。

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