日本農村医学会雑誌
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ケアマネジャーのための医師への依頼文例集作成の取り組み
平川 仁尚
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2014 年 63 巻 1 号 p. 83-85

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抄録

 現在,国は,団塊の世代が75歳以上となる2025年へ向けて,高齢者が尊厳を保ちながら,重度な要介護状態となっても,住み慣れた地域で自分らしい暮らしを人生の最期まで続けることができるよう,住まい,医療,介護,予防,生活支援が,日常生活の場で一体的に提供できる地域での体制作りを推進している。この体制の構築のためには,地域において高齢者の生活全体を支える多職種ネットワーク作りが欠かせない。その中心となる職種として期待されたケアマネジャーは,介護保険が導入された当初から,業務の多忙さなどからマネジャーとしての役割を充分に果たせていないという声や多大なストレスを抱えているケアマネジャーが多いという声が少なからずある1,2)。とりわけ,介護保険導入時に比べて看護師など医療系の資格を持つケアマネジャーが減少し,介護系のケアマネジャーが増加しているため,ケアマネジャーと医療職とのコミュニケーションが以前にも増して困難になっていくという危惧もある。そこで,高齢者の生活全体を支えるネットワーク2,3)で医療者との連携を密にするためにケアマネジャーを中心に多職種で議論を重ねた結果,様々な場面において医師への依頼文をどのように記載したらよいか悩み,時間を浪費するケアマネジャーが多いことが分かった。さらに,このネットワークでは,ケアマネジャー等と共同で医師への依頼文例集作成のためのワークショップを開催した。まず,医師への依頼文をどのように書いたらよいか悩む場面をワークショップに参加したケアマネジャーに想起してもらい,寝たきりの人の褥瘡が悪化して訪問看護の指示を依頼する場面,対応困難な周辺症状の人の病状報告を行なうと同時に認知症専門外来を勧めてよいか尋ねる場面,内服管理が困難な高齢者の処方薬の内服回数を減らして欲しいと依頼する場面などが挙がった。次に,その場面一つひとつについて筆頭著者と看護師の2名のファシリテートの下で作成していった。現在,図1のような文例が蓄積されつつあり,今後も継続していく予定である。こうした取り組みは,ケアマネジャーの文書作成力や医療者とのコミュニケーション力の向上に資するものと期待される。各地域の現場での多職種連携教育のヒントとなることを望む。

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© 2014 一般社団法人 日本農村医学会
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