2016 年 64 巻 6 号 p. 1028-1034
肺癌におけるEpidermal Growth Factor Receptor (EGFR) 遺伝子変異検査は, 分子標的薬の選択のために現在ほとんどの医療機関において検査が行なわれている。当院におけるEGFR遺伝子変異検査の検査実績を集計したところ, 肺生検材料を用いた変異陽性率は手術検体のそれより低かった。この原因として生検等では腫瘍細胞含有率が低く, 偽陰性になっていることが推測され, 同一症例の手術標本と術前生検標本からそれぞれ変異検出を行なうとともに, 生検標本の良性, 悪性細胞の数を数え, 標本中の腫瘍含有率を調べた。その結果, 手術標本変異陽性の6例の生検標本ではそのうちの3例が陰性と判定された。そして, 腫瘍細胞と非腫瘍細胞の数を調べると, 偽陰性となった生検標本ではいずれも腫瘍細胞が5%以下の標本であり, これより腫瘍細胞の含有率が少ない標本では偽陰性化する可能性が考えられた。病理生検標本を用いて遺伝子検査を行なう場合には特に腫瘍細胞含有率には注意を払う必要があると考えられた。