日本農村医学会雑誌
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原著
高齢者の日常生活状況に関与する各種要因の解析 第Ⅱ報
日常生活状況への「田畑の世話の有無」の関与
杉浦 正士早川 富博
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2016 年 65 巻 1 号 p. 34-45

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抄録

 三河中山間地域で生活する高齢者に対する見守り・支援体制の構築を目的とした広範なアンケート調査を実施し,4,000名を超える高齢者の回答から日常生活に関与する重要な要因として「毎日の仕事の有無」「趣味の有無」「田畑の世話の有無」「食事状況」「地域活動への参加の有無」が抽出されたことを第Ⅰ報1)にて報告した。  今回は,重要な要因として抽出された「田畑の世話の有無」に注目し,高齢者の日常生活状況,老研式活動能力指標および老年期うつ病評価尺度(GDS)の各項目との関連について解析した。  「田畑の世話」は,高齢者の日常生活状況,活動能力,GDSの多くの項目に関与することが明らかとなり,主な結果をまとめると以下の事項に要約される。  ・「世話あり」群では,外出機会が多くなって地域社会との関わりや地域活動などが積極的になる。  ・「世話あり」群では,日常生活の活動能力指標が全体的に良好になり,特に手段的自立評価の事項で良好であった。  ・「世話あり」群では,「うつ傾向」と判定される可能性が「世話なし」群よりも低率で高齢層ほど群間差が拡大する。  ・「田畑の世話」は,女性よりも男性により良好な方向に関与する。  診療圏に多くの中山間地域や田園地帯など田畑の世話をする環境の整った地域を抱える厚生連病院においては,高齢者支援の1手段として「田畑の世話」の実施を促すことには大きな意義があると考える。

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© 2016 一般社団法人 日本農村医学会
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