日本農村医学会雑誌
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老人性不整脈
森 拓也
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2016 年 65 巻 2 号 p. 136-143

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抄録

 不整脈は加齢とともに増加する。高齢者においては加齢に伴う刺激伝導系及び周辺組織の変性,線維化により生じる伝導障害に加え,高血圧,糖尿病,虚血性心疾患,心不全,電解質異常などの基礎背景疾患が不整脈の発生・増悪に関与している。高齢者に特徴的にみられるのは,刺激生成異常(洞徐脈,洞不全症候群),刺激伝導障害(房室ブロック,脚ブロック),ならびに上室性不整脈(上室性期外収縮,心房細動)である。高齢者では自覚症状が多様化し,個人差が大きく,認知症の合併もあり,不整脈の臨床徴候をとらえることが容易でない。薬物療法においては高齢者における薬物動態の変化をふまえた投与が望ましい。全身の合併症,各臓器の予備能の低下が存在し,多剤服用例が多いため慎重な薬剤選択が必要となる。心房細動は加齢とともに増加し,心原性脳塞栓症を発症した時には高齢者のQOL,生命予後に重大な影響を与える。抗凝固療法の適応はCHADS2スコアにて評価され,出血性合併症のリスクを考慮したうえでワルファリンまたはNOACでの治療が選択される。非薬物療法(恒久ペースメーカー,カテーテルアブレーション,埋込み型除細動器)には年齢上限はないが,侵襲度を十分に考慮して判断されなければならない。高齢者では心機能予備能が低く,生理的ペーシングが主流である。

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© 2016 一般社団法人 日本農村医学会
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