日本農村医学会雑誌
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原著
長野県佐久圏域における重症心身障がい児の現状と課題
細谷 まち子牛久 英雄依田 達也蓮見 純平坂本 昌彦
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2016 年 65 巻 4 号 p. 738-746

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抄録

 近年わが国では小児医療の進歩に伴い,救命率が向上している。一方では,重度の障がいを残したこどもたちが増加し,その多くは自宅で生活をしている。佐久総合病院の位置する佐久圏域のなかで,重症心身障がい児の背景を調査した。さらに自宅で生活をしている重症心身障がい児が,家庭でどのような医療的ケアを受け,また社会的資源を利用しているか調査をした。  2015年4月1日時点で,佐久圏域に住んでいる18歳以下の重度知的障がいと重度肢体不自由を重複している小児を対象とした。  佐久圏域では,重症心身障がい児数は40例で人口比は0.02%であった。30例(75%)が自宅で生活をしていた。基礎疾患は,周産期に由来する症例が21例(52.5%)であった。  自宅で生活をしている30例中,超重症児は8例,準超重症児は7例,それ以外の重症児は15例であった。社会的支援の中の訪問サービスでは,往診が1例,訪問看護の利用は10例であった。超重症児は全例で訪問看護を受けていた。短期入所は,医療型入所施設が1か所で,一般病院を利用している重症児もいた。児童短期入所の利用は,13例(43.3%)であった。児童通所支援の利用は,19例(63.3%)であった。  訪問看護は,医療的ケアの必要度が高い重症児が利用していて家族の支えになっていた。一方児童短期入所施設や児童通所支援が不足していて,利用者は半数に満たない。今後,重症心身障がい児を地域で支援する社会資源の充実が望まれる。

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