2016 年 65 巻 4 号 p. 868-871
われわれは,紡錘細胞型の細胞像を呈した77歳の甲状腺髄様癌の症例を報告する。針穿刺吸引細胞診では,炎症や出血のない背景を伴い紡錘型の細胞が多数出現していた。細胞は悪性所見に乏しく均一的であった。腫瘍の確定のため免疫細胞化学染色が行なわれた。染色の結果,CEA,カルシトニンが陽性となり,紡錘細胞亜型髄様癌と推定することができた。細胞はpap染色では悪性と診断することが難しく,診断には免疫細胞化学的検索が必要であった。髄様癌は細胞像が多彩であり,形態診断のみでは診断するのは困難である。当院では穿刺吸引細胞診検体は全てLBC固定液で保存されており,免疫細胞化学のような再検討のためにはLBC固定液での保存が有効と考えられた。