日本農村医学会雑誌
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綜説
統合失調症者の病いとの「折り合い」に関する研究の動向
瀬戸口 ひとみ糸嶺 一郎
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2017 年 65 巻 5 号 p. 917-923

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抄録

 統合失調症は,これまで入院中心の精神医療の中で保護されてきた。しかし,現在,地域生活への移行が進められている。統合失調症者が地域で生活していくためには,自己の体験を認識し症状をコントロールし,人間関係を構築していくなど自分自身の病いと折り合いをつけながら生活していくことが必要なのではないかと考えた。統合失調症者は病いとどのように「折り合い」をつけているのか,看護介入についての示唆を得ることを目的とし文献を概観した。医中誌,CiNii,最新看護索引Web,Medical Finder,Pub-Med, メディカルオンラインで検索を行ない,日本語論文38編,英論文2 編を抽出した。先行研究から,病いの体験・意味,スティグマの構造,折り合いを構成する要素が明らかになった。病いの体験・意味からは,その体験を乗り越える力をもった当事者の姿が,スティグマの構造では,疾患の持つイメージによって自己の病いを受け入れられず苦しむ当事者の姿が明らかになった。また,病いと折り合いをつけるには,病いを理解し,受容したうえで,周囲の人々と信頼関係を築き,社会的な存在として生活していくことが当事者にとって重要であることが明らかとなった。

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© 2017 一般社団法人 日本農村医学会
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