高齢者の望ましくない転帰を招くフレイルは,認知症と関連があると報告されている。高齢者のフレイルを評価することは,高齢者が認知症となっても住み慣れた地域で尊厳のある生活を送れるような支援体制づくりに役立つのではないかと考えた。しかし,本邦でフレイルと認知症との関連について検討した報告はほとんどない。そこで本研究では,フレイルと認知症,さらに認知症の精査希望との関連について検討した。平成27年11月から平成28年4 月の間に要介護認定申請した高齢者49名を対象に,認知症既往や認知症の精査希望があるかといったアンケート調査を実施し,フレイルを評価した。認知症既往のない高齢者をフレイル有無の2 群に分け,年齢,性別,改訂長谷川式簡易知能評価スケール(HDS-R)の点数,認知症疑いおよび認知症の精査希望について比較検討した。その結果,認知症既往のない高齢者は29名であり,フレイルあり群は13名で,フレイルなし群は16名であった。その2 群間の比較では,HDS-R の点数,認知症疑いおよび認知症の精査希望において有意差を認めた。本研究から,要介護認定申請時に認知症既往のない高齢者がフレイルであると,認知症の可能性は高く,認知症が疑われても精査を希望しないという結果が示された。高齢者のフレイルを評価することは,認知症やその精査希望の有無の指標となり,高齢者やその家族に対する認知症の支援体制づくりの一助となると考えられた。