日本農村医学会雑誌
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研究報告
総合病院に勤務する看護職者の情動知能の実態
大坪 奈保
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2017 年 65 巻 5 号 p. 994-1005

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抄録

 臨床で働く看護職者の情動知能の実態と感情コントロールの難しい臨床場面を明らかにすることを目的とし,平成25年5 月,A 病院に勤務する看護職者991名を対象に,内山らによる日本版情動知能(以下EQS)を用いて情動知能を測定した。さらに,感情コントロールの難しい臨床場面を調べ,EQS との関連を調べた。その結果,年代による比較では,40・50代の看護職者の得点が「感情察知」「熱意」「自己決定」「目標追及」,「決断」「集団指導」「危機管理」「機転性」において,有意に高かった。また既婚看護職者,子供をもつ看護職者の得点が有意に高かった。
 感情コントロールの難しい臨床場面として159名(35%)が「スタッフ数や教育体制にともなう,過剰な業務を処理しなければならないとき」を挙げた。この場面を選択した看護職者は,EQS の「熱意」「自制心」,「悩みの共感」「配慮」「自発的援助」「人付き合い」「人材活用力」「協力」,「楽天主義」「危機管理」「適応性」において,得点が有意に低かった。
 結果から,職場労働環境やチームワークにおいての困難を感じていることが示唆された。看護基礎教育や臨床において,看護職者自身の感情のコントロールについて学ぶ機会はほとんど設けられていない現状がある。情動知能の身につけ方として,先輩ナースの言動などを見聞きすることや看護職者自身が臨床の場で感情コントロールを模索することで,身に付けていくことが推測される。

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© 2017 一般社団法人 日本農村医学会
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