日本農村医学会雑誌
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研究報告
感染対策チームの介入が術中抗菌薬投与の順守率にもたらす影響
吉岡 研之香取 陽子石川 みどり深澤 努田島 英雄清水 崇史井上 元保
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2017 年 66 巻 1 号 p. 48-54

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抄録

 SSI 予防の観点から手術中の抗菌薬は,加刀前60分の投与後は3~4 時間毎の投与が望ましい。当院では3 時間毎の抗菌薬投与が順守されるようにICT が介入し,介入前と介入後で抗菌薬投与の順守率に差が出るか否かを分析した。  対象は麻酔時間210分以上あるいは手術時間180分以上の手術症例435例とした。抗菌薬は加刀前60分以内に投与し,以後180分毎に追加投与を行なうものとして術中に正しく投与されていた症例を順守とみなし,その割合を調査した。ICT の介入は用紙と白板への時刻記載により主治医・麻酔科医・看護師に促すようにした。分析は, 1)科別, 2)介入の有無, 3)特殊な術式(内視鏡,腹腔鏡)について行なった。  全体の順守率は51.0%であり,科別では,外科67.0%,整形外科27.1%,耳鼻科40.5%,産婦人科45.5%,泌尿器科37.5%であり,外科はその他の科よりも有意に高かった。介入前後の比較では介入前42.7%,介入後69.9%と介入後は有意に順守率が高くなった。また,内視鏡手術は25.8%とその他の手術(55.2%)よりも有意に低くなり,腹腔鏡手術は63.1%とその他の手術(47.3%)よりも有意に高くなった。  ICT の介入により抗菌薬投与の順守率は有意に改善した。しかし,それでも順守率が低い手術があり,その向上のためには,手術に関わるスタッフ全員が意識して正確な抗菌薬の追加投与を促すように努める必要がある。

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© 2017 一般社団法人 日本農村医学会
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