2019 年 68 巻 4 号 p. 475-481
ベンゾジアゼピン(BZD),非ベンゾジアゼピン(非BZD)服用中にスボレキサント(SUV)を使用した際の報告は少ない。そこでBZD,非BZD服用中患者に対するSUVの使用実態調査を行なった。2015年11月~2017年3月末までにBZD又は非BZDを4週以上服用中にSUVが処方開始となった73名を対象とした。SUV投与直前まで処方されていたBZD又は非BZDの投与量が,開始時に変化がない群(非減量群)32名,一部減量した群(減量群)23名,中止した群(中止群)18名に分類した。年齢,性別,抗精神病薬服用の有無,4週以降において各週のSUVの継続率,SUV投与前後のジアゼパム換算値を各群で比較した。また,SUV開始後の副作用発現状況を調査した。各群における24週時点でのSUV継続率を比較したところ,3群間に有意な差は見られなかったが,8週時点で減量群が非減量群と比較して有意に減少した。ジアゼパム換算値をBZD,非BZDの投与前後で比較したところ,投与前の非減量群,減量群,中止群に有意な差が見られた。副作用は非減量群18.8%,減量群13.0%,中止群16.7%,神経・精神系は6.3%,8.6%,16.7%であった。BZD,非BZD服用中にSUVを上乗せすることで継続率が低下する可能性が考えられた。BZD,非BZD服用患者にSUVを使用する場合にはBZD,非BZDを減量又は中止することが望ましいが,中止の際に副作用がより増加する可能性があるため,退薬症候等に注意しながら減量することで,安全性を向上することが重要と考えられた。