日本農村医学会雑誌
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慢性農薬有機燐中毒症を疑わしめる場合の血清中農薬有機燐の検出とその意義
渡部 忍
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1974 年 23 巻 1 号 p. 42-50

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抄録

津軽農村地帯農民によく見られる症状として, 頭痛, 頭重, めまい, 肩から手にかけてのシビレ症状, 時には原因不明と思われるような嘔吐等あるが, これらの症状は, 急性農薬有機燐中毒症を完全に治癒しないで経過した場合や, いつのまにか散布その他の原因で体内に浸入し, 慢性中毒を疑わしめる状態になった場合にまま見られることである。
いずれにせよ, このような症状を呈する場合, 慢性農薬有機燐中毒症を疑い, 主として血清中農薬有機燐の検出, 一般生化学検査, 酵素学的検査を行ない, 特にこのような疑いの持たれる場合, 血中の有機燐の検出結果はどうであるかを検討した。
この結果, 15例全例にダイアジノン, サリチオン, マラソン, スミチオン, パラチオン, EPNのいずれか1乃至は2, 乃至は3, 4の農薬の検出を見た。この事実の意味づけについては, 極めて慎重を要することであるが, 一つにはその個体個体の解毒排泄機能に左右されるであろうし, また, 場合によっては食品よりの摂取も考えられることである。しかも, これらの検出されたことと, 慢性農薬有機燐中毒と疑われる場合と, 実際にどれだけの正確な関連があるかは, 侵入経路並びに残留問題と同様, 今後の重要な課題として, 更に深く検討したいと思う。

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