全国10研究機関によって, 日常労働に従事する農村婦人を対象として, 血液レベルに従って, 軽度貧血 (Hb10.0~11.9g/dl), 貧血 (Hb9.9g/dl以下), 正常 (Hb12.0g/dl以上) の3群に分けて, 臨床的精密検査を行い検討した。調査人数は, 軽度貧血群198名, (Hb10.0~10.9g/dl89名, 11.0~11.9g/dl109名), 貧血群77名, 正常群195名である。
調査結果をみると, 最も特徴的所見は, 貧血群では, 低色性小球性で, 血清鉄70μg/dl未満, 不飽和鉄結合能 (UIBC) 320μg/dl以上が90%以上にみられ, 軽度貧血10g/dl群では, 血清鉄低下者は72%, 11g/dl群ではそれが47%, 正常群では22%と明瞭な差がみられたことである。そして, 軽度貧血11g/dl群では正色性正球性の頻度が高くなり, むしろ正常群に近い血液所見であった。そのほか, 血色素レベルの低い群ほど, 網状赤血球の頻度がやや高く, 血液沈降速度促進者の割合が高く, ヘモグラムでも赤血球大小不同等異常所見が多く認められた。A/Gはやや低い傾向であった。しかし, 三重・中勢総合病院で実施したVitamin B12, エリスロポエチン測定では1例の異常もみられなかったように, 鉄欠乏性以外の貧血は血液学的にみて1例も認められなかった。なお, 熊本大・公衆衛生では血清鉄低下と同時にVitamin Eの不足をみているが今後の課題と考えられる。
自他覚症状との関係では, 貧血にめまい・立ちくらみ, 動悸, 粘膜蒼白, 爪の変化が多かったが, その差は少なく, 貧血の診断は血液所見によらざるを得ない。