日本農村医学会雑誌
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農作業に起因する呼吸器障害 (農夫肺等) に関する研究
野田 喜代一小西 行夫菅野 二郎和泉 昇次郎海塩 毅一佐々木 志保子亀山 宏平高頭 正長磯村 孝二神辺 譲加藤 英輔海老原 勇内田 昭夫上田 厚野村 茂宮本 昭正
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1978 年 26 巻 5 号 p. 693-713

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抄録

本研究班が, 調査研究した農民の呼吸器障害の実態についての主な成績は次のとおりである。
(1) 農村においては呼吸器症状を訴える者が高率にみとめられるが, 農作業とくに脱穀, もみすり, 堆肥づくり, 農薬散布などによる症状の出現あるいは増悪は重要である。農夫の剖検肺の所見では, 農作業塵肺ともいうべき所見が明らかであり, 農作業時の防塵処置が必要であることがわかった。
(2) 農村の特異な呼吸器疾患としてのアトピー型気管支喘息については, 今回, その起因物質として, イネワラ, ムギワラ, 茶の新芽・新葉, 菊の葉のウブ毛の抗原性を確認したが, その他にもすでにわかっている抗原が多数存在する。その治療上および予防上の対策の樹立が必要である。
(3) 農夫肺の病因としてのカビ類抗原陽性者は, わが農村ことに畜産農家にかなり高率にみとめられるが, 顕性の農夫肺は, これまで, 2例が報告されただけである。本研究班は1例を追加した。今後さらに, 広汎な対象に対する免疫学的検索と, 陽性者に対する臨床的追求とが必要である。
(4) 以上の成績から, 農村の呼吸器障害については, 研究すべき問題が多数存在しており, 今後, 一層の研究が必要である。

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© (社)日本農村医学会
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