日本農村医学会雑誌
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有機リン剤の急性毒性試験における電顕的研究
鈴木 彰浅沼 信治阿部 栄四郎黒沢 和雄佐々木 喜一郎島崎 邦雄
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1978 年 27 巻 4 号 p. 791-799

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抄録

1. スミチオンをラットに対して体重1kg当り300mg投与して, 投与後1日, 2日, 5日, 10日, 15日, 30日目に動物を解剖し, 外眼筋などの変化を光顕および電顕で観察した。残留スミチオン量は10日目には検出限界以下になり, ChE活性値も10日目までにほぼ回復した。光顕および電顕による観察では, 筋および神経終末の構造は, 5日目までは形態学的変化がそれほど著しくなく, 5日目以降に変化が増強された形で認められた。主な変化はJunctional foldの膨化, Synaptic vesicleの減少である。
2. スミチオン, 乳化剤, スミチオン乳剤, スミチオンDDVP油剤をラットに, スミチオンに換算して30mg/kg体重投与し, 投与後3時間, 1日, 5日, 15日, 30日目に解剖し外眼筋などの変化を電顕, 光顕で観察した。残留スミチオン量は, 血液ではすでに5日目で検出限界以下になり, ChE活性値も, 5日目でほぼ正常値近くまで回復した。電顕による外眼筋の観察では, 投与後1日ですでに, シナプスの腫大, J. f. の断裂, シナプス嚢の変化を認め, 5日目まで同様の変化が持続し, 15日, 30日目ではJ. f. の肥厚, 糸粒体の変形を残す所見を得た。またスミチオンDDVP油剤投与群では, J. f. の肥厚が増強し, またシナプス膜の断裂などある程度相乗作用として考えるべき所見であった。
3. ホスベルをラットに体重1kg当り5, 10, 15, 20mg投与し, 投与後, 2日, 5日, 10日, 20日目に解剖し, 外眼筋などの変化を電顕, 光顕で観察した。外眼筋は2日目に, 15, 20mg/kg投与群で, シナプス小胞の減少, 糸粒体の萎縮などが認められ, 5日目でJ. f. の断裂などが20mg/kg群で認められた。10日から20日では, シナプス小胞の減少, J. f. に空胞変性などがみられたが, 遅発性神経毒性と認められる所見はえられなかった。

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