韓国生れの1女性が, 謳幹部に移動性の腫瘤と血疾を来し, 明らかに肺吸虫症を疑わせる症状があったにもかかわらず, 検疾によっても寄生虫卵や結核菌は検出されないままに, 胸部のX線写真の所見で, 右中肺野の陰影にもとついて, 肺結核症の疑いのもとに, 抗結核療法が行なわれていた。
その後, 著者の研究室で検疾と検便を行ない, 多数の肺吸虫卵を検出し, 肺吸虫症に特効のあるビチオノール (ビチン) で治療を行ない, 2クールの治療 (総投与量41.69) により, 喀痰や糞便中に肺吸虫卵は全く検出されなくなった。
また胸部のX線写真の所見でも, 右中肺野の陰影は完全に消失し, 血液所見も正常に復して, 本症を完全に治癒させることができた。
なお虫種については, 補体結合反応により, 1%処agonimus westermaniと同定された。