日本農村医学会雑誌
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千葉県南部沿岸漁業者の生活・健康調査
内田 昭夫岩崎 二郎
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1985 年 34 巻 1 号 p. 12-20

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抄録

千葉県南部, 東京湾沿岸の, 鋸南町2漁村, 太平洋に面する館山市1漁村の30~69才の沿岸漁業従事者, 男122名, 女87名, 計209名について, 生産及び生活労働と健康との関連を, 1981年から3年間, 冬期に調査した。この地域の漁業は, 一本釣りと網漁が中心で, 前者では, たて縄, はえ縄及び竿釣り, 後者では, 定置網, 刺網, あぐり網がおこなわれる。5t以下の漁船を用いての漁労であり, 一日の労働時間が長い特徴があり, なかには夜間労働を余儀なくされる漁種がある。海上で漁業労働に従事するのはほとんどが男で, 年間の従事日数は220日前後である。女は, 少数の海女以外, 多くは漁業補助作業である。食品摂取状況をみると, 男女とも, 魚貝類, 淡色野菜, 果物が多く, 牛乳, 乳製品が少ない。飲酒, 喫煙率は, 男では, それぞれ70%と高いが, 女では低い。健康診断結果では, 高血圧出現率に, 男女差はなく16%前後であり, 心電図異常は, 男女とも10%以下である。肥満出現率は, 男より女に高いが, 労働負担が小さいことによると思われる。3漁村とも貧血の出現率が低く, 男女の中性脂肪, 漁夫のBUN異常出現率が高い。農夫症では, 肩こり, 腰痛のほか, 夜尿, 不眠め出現率が高く, 一般的健康状況では, かぜをひきやすい傾向がみられた。また, 漁夫に翼状片がみられた。以上の所見は, 沿岸漁業の漁労, 食生活, 沿岸環境との関連を示唆していると思われる。

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