日本農村医学会雑誌
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鹿児島県錦江湾におけるハマチ養殖業者の生活労働と健康に関する研究
中馬 康男瀬下 安男白畑 敬子前田 育子加茂 千枝子草野 健宮原 一彦
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1985 年 34 巻 1 号 p. 34-42

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抄録

鹿児島市の東南部, 錦江湾に面する垂水漁協 (海潟地区, 組合員数643名, 年間取引額約40億円) のハマチ養殖従事者について, 健康生活の実態調査, ならびに教育指導を3年間実施し, 隣接した農'協組合員,(農業従事者) との健診成績を対比した。海上労働のため感冒, 腰痛が多く, 食生活の偏り, また健康に対する意識不足により, 肥満, 高脂血症, 肝障害, とくに男性におけるアルコール性肝障害が多く見られた。また早朝就業, 朝食ぬき, 午前中で終了, 午後は比較的 “暇” であり, 午後の時間の健康的な利用がなされていない。
さらに, 農業従事者に比して若年層が多いのに, 健診結果では漁業従事者に不健康者が多くみられた。3か年継続受診者グループは少数であったが, 教育により, 肥満, 血圧異常者が多少改善されたが, 心電図異常, 肝機能異常が増加していた。
以上の点から漁村地区は, 農村地区に比して, 若年層が多いにもかかわらず, 健康に対する認識が低く, 実態調査でも悪い成績であり, また食生活にも改善すべき問題が多く, これは生活習慣, 労働形態から由来すると思われるので, 今後長期間の継続的な対策, 教育が必要と考えられた。

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