日本農村医学会雑誌
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市販鶏肉における合成抗菌剤NICARBAZINの残留について
萬田 芙美松下 敏夫上田 厚吉岡 満城青山 公治
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1985 年 34 巻 2 号 p. 104-109

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抄録

近年, 畜産業や養殖業の生産過程において, 多種類かつ多量の抗菌性物質が使用されており, 食品への残留が懸念されている。著者らは, 合成抗菌剤Nicarbazin (NCZ) の簡易分析法を検討し, 併せて市販鶏肉における残留実態を検索し, NCZの使用と安全性および流通過程における継続的な監視の必要性に関して若干の考察を試みた。
残留NCZの分析は, 鶏肉のAcetonitrile抽出物を直接HPLCに注入する方法を用いた。本法は, 抽出物を脱脂, 脱水の前処理をすることによって, 煩雑な精製操作を省略し, 簡便かつ精度の高い方法として, 使用可能であった。
鹿児島市内の店舗より任意に購入した市販鶏肉について, NCZの残留調査を実施したところ, その検出率は13.0%(N=131) であった。季節的には, 夏季の疾病多発時, および月別では12月, 3月と需要の多い時期に, 検出率が高い傾向が認められた。また, 鹿児島県外で購入した市販鶏肉からも, ほぼ同様のレベル (検出率12.5%N=40) で残留が認められた。
NCZは鶏肉の中でも脂肪部位に多く蓄積し, 生物学的半減期が比較的長く, また特殊な毒性を有することから, 設定されている休薬期間の妥当性や, 人体に対する安全性についてもより詳細な検討が必要である。

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