日本農村医学会雑誌
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新潟県における農村婦人の健康障害とその対策
積雪寒冷地における積雪期と非積雪期について
杉山 一教亀山 宏平
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1985 年 34 巻 2 号 p. 141-153

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抄録

社会情勢の変化に伴い, 農業者の労働条件, 生活様式も変ってきた。新潟県においてもとくに平場の複合経営農業にその傾向は顕著である。一方, 豪雪地帯も多い新潟県で零細な山間積雪地の農業従事者, とくに農作業の主役をつとめ, 冬場は豪雪と戦う婦人農業従事者の健康障害にも目をむけなくてはならない。過去の調査では平場の成績に比し健康障害はやや少ない結果であったが, 今回は季節的な関係を比較し, 健康調査, 生活・生産行動調査を施行し, 問題点を取りあげその対策を検討した。
積雪期の健康調査では肥満と高血圧が多かったが, 腰痛と貧血は少なかった。また, 生活・生産行動調査では両時期間にほとんど差はなかった。とくに目立つ点は菓子類の間食, 牛乳摂取の不足, 自らすすんで健診をうけたことがない, 体の具合が悪くとも無理をして働く等であった。これらをふまえて健康教育, 料理教室等を頻繁に行ない意識の向上に努めた。
3カ年の成果として生活面, 作業面でそれぞれ90.4%, 56.2%が気をつけるようになっている。健康面では残念ながら肥満者の減少はみられなかったが, 高血圧は半減し, 農夫症も少なくなった。年間150日は雪にとざされ, 屋根の除雪も平均14回前後という豪雪も, 長年の生活の知恵で左程労働負担にならず, つつましい生活ながら継続的な肉体労働のない数ヵ月をすごすことによって, むしろ健康には好影響をもたらしていると思われる。

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