1985 年 34 巻 2 号 p. 193-208
農家婦人の農業労働における役割と労働負担の概容を多数の対象について把握するために, 熊本県下の農家婦人1,965名と対照として同一地域の非農家婦人261名について調査を実施した。労働力として農家婦人の比重が最も高い作目は施設園芸で, 煙草がこれに次いでいた。機械化の進展をみている作目では, 農業機械の操作は主として男子が担当し, 婦人は機械まわりの手作業に従事する傾向が顕著であった。また, 各農作業への従事状況は専兼別にかなり明瞭な差がみられた。農家婦人が最も辛いと感じる作業, 危険と感じる作業を作目別に明らかにし得たが, 全般的に農薬散布, 大型農業機械の操作, 草刈り機の使用に強い負担を感じているようであった。これらの労働負担が農家婦人の健康におよぼす影響については, 綿密な労働衛生学的な観察と関連要因も含めた多因子について疫学的な解析が必要だと思われた。