日本農村医学会雑誌
Online ISSN : 1349-7421
Print ISSN : 0468-2513
ISSN-L : 0468-2513
農村における肝硬変症および細小肝癌症例に関する臨床的検討
森本 哲雄村田 欣也嵜山 浩子田尻 三昭水田 実新谷 清兼行 俊博
著者情報
ジャーナル フリー

1986 年 35 巻 4 号 p. 779-786

詳細
抄録

過去5年間に, 当院において経験した肝硬変症患者141例について臨床的に検討した。患者の平均年令は57.8才, 男女比は2.8: 1であった。肝硬変症の成因としては, 原因不明が最も多く75例53%, ついでアルコール性49例35%, HBウィルス性16例11%であった。肝硬変症患者70例を, 代償期と非代償期に分類して比較した。その結果, 血液生化学的検査では, コリンエステラーゼ, ICG15分値, アルブミン, プロトロンビン時間, 赤血球数の5項目が, 代償期と非代償期を鑑別するうえで, 重要な指標になると思われた。
つぎに, 当院において経験した, 細小肝癌症例8例について検討した。細小肝癌は「最大径3cm以下の単発した肝癌」と定義した。疑診の動機としては, AFPの上昇が最も多かった。画像診断のスクリーニング法2しては, 腹部エコーが最も有用と思われた。また, アンギオで確診できなかった2例を, エコーガイド下吸引細胞診で診断した。細小肝癌8例のうち, 手術施行例は6例であり, 2例は術後短期間で死亡したが, 4例は現在生存中である。手術できなかった2例は, それぞれ診断後6か月と2か月で死亡した。切除例の病理組織学的検討を4例について行なったが, Edmondson分類では全例grade IIであった。被膜形成は3例にみ2められたが, 3例2も被膜外浸潤を伴っていた。脈管侵襲 (顕微鏡的) は1例にみられた。

著者関連情報
© (社)日本農村医学会
前の記事 次の記事
feedback
Top