1986 年 35 巻 4 号 p. 818-824
就農者の高令化がすすんで, 農業労働災害が頻発してきた。高令化の実態は, 農業就業人口640万人のうち, 50才以上が68%という状況である。農業労働災害の現状は, 死亡事故だけでも昭和46年から58年までの13年間に5,049人が死亡した。最近の3か年平均をみても50才以上の死亡事故が70%を占めて, 高令者に事故死が集中している。
憂慮すべきことは,「動作の遅れ」が原因で農作業事故を起こしているのが全体の42%にも達していることは高令者事故の特徴である。就農者の高令化で農機の操作ミス (Human Error) がなぜ起きるのかの研究視点が重要になってきた。農機運転のしやすさ (Operability) が追究されなければならない。農機運転上の人間的側面から事故要因の検討が必要であると考える。人間と機械とのかかわり合い (Man Machine Interface) の改善がこれからの事故防止の重大課題である。高精能・高能率・安全の農機でありながら実際に農機事故が減らないで, 増えている原因は何か。農機事故原因をつかみ, 同種災害の再発を防ぐ事故調査が必要である。また, 欠陥機械の発見も必要である。安全対策は, 健康づくりと同様に農作業現場の安全づくり, 安全への投資を実施することである。