日本農村医学会雑誌
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ヒト血漿カルボキシルエステラーゼに対する有機燐系農薬の阻害作用について
保田 仁資
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1989 年 38 巻 2 号 p. 71-80

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抄録

ヒト血漿に対して16種類の農薬を作用させカルボキシルエステラーゼ (CE), アリルアシルアミダーゼ (AAA), コリンエステラーゼ (chE) 活性を測定し50%阻害濃度 (I50), 阻害定数 (Ki), pl50 (-log I50) を求めた。in vitroにおいてヒト血漿に有機燐系農薬を作用させた場合にCEI50はAAAI50, ChEI50より低い値となり, CE活性は他の2酵素よりも強く阻害された。また, DDVPによる阻害はCEI50<AAAI50<ChEI50の順であった。DDVP散布前後および3時間後に酵素活性を測定したところCE, AAA, ChE活性ともにin vitroにおける阻害と一致し, 3酵素とも散布後に低下する傾向がみられた。このうちCE活性の低下は有意であった (p<0.05)。したがって, ヒト血漿に対する有機燐系農薬の酵素阻害指標としては現在用いられているChE活性よりもCE活性を用いることがより鋭敏である。CE, AAA, ChE pl50相互の相関係数は, 0.92以上となり互いに高い相関を示した。ヒト血漿CE活性に対する有機燐系農薬のKiと阻害様式とを求めた。BRPのDixon plotにおいて, 非拮抗型阻害であり, Ki=0.36×10-7Mを得た。他の農薬も同様の結果が得られた。このことから, 有機燐系農薬に対するCE活性阻害は非拮抗型阻害である。殺菌剤IBPと殺虫剤MEPの混合剤は農薬単独の場合よりもCE活性を強く阻害する傾向がみられた。MPPの-SCH3基およびCYPの-CN基を-NO2基で置換したMEPおよびEPNはCE活性阻害が増大する傾向がみられた。

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