日本農村医学会雑誌
Online ISSN : 1349-7421
Print ISSN : 0468-2513
ISSN-L : 0468-2513
イチゴの出荷規格による調整作業にともなう労働負担と出荷規格に対する意識について
末永 隆次郎今村 禎子前田 勝義山田 統子高松 誠
著者情報
ジャーナル フリー

1989 年 38 巻 4 号 p. 895-907

詳細
抄録

現在, 農産物のほとんどに出荷規格が設けられており, 農家は収穫作業のほかに, この出荷規格にそっての調整作業 (選別, 箱詰作業など) をしなければならず, 余分な労働負担を強いられていると考えられる。そこで, イチゴ農家についてイチゴの出荷規格による調整作業に伴う農家の労働負担および出荷規格に対する意識調査を実施し, 解析した。イチゴの出荷規格は, 品質で3段階, 等級 (大小) で6段階, さらには等級に応じての重量で3段階に分けられ, 非常に煩雑となっている。出荷に際しては出荷締切り時刻が設けられており, 収穫量の多い時には, 作業時間が長く, 朝早くからの作業になる。とくに2月, 3月には2Lから2Sの各等級のものが比較的満遍なく出荷され, 調整作業時間のみで5時間を超え, イチゴ作業時間のうちの60%以上を占めていた。また, 1パック分を選果・選別するのに要する時間は, 等級が小さいほど時間がかかっていた。イチゴの出荷規格や調整作業時の作業姿勢の変化および心拍数やフリッカー値の変動からイチゴの調整作業は精神神経的に負担の強い作業と示唆された。なお出荷規格に対する意識調査では, 出荷規格による選別の必要性は84.3%の者が認めているが, 現状ではますます調整作業が厳しくなっており, 出荷規格の簡略化を64.0%の者が望んでいた。農家の労働負担を軽減し, さらには消費者に利益をもたらすためにも出荷規格の簡略化が必要と思われる。

著者関連情報
© (社)日本農村医学会
次の記事
feedback
Top