日本農村医学会雑誌
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農薬中の遊離珪酸の定量
田中 茂今泉 敬七郎関 幸雄今宮 俊一郎
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1990 年 39 巻 1 号 p. 28-32

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抄録

普通粉剤, FD剤, 液剤農薬には, 珪酸塩化合物を増量剤として添加されており, 塵肺の発生に影響を与える遊離珪酸の含有が予想される。普通粉剤3種類, FD剤4種類および水和剤11種i類合計18種類を対象にX線回折法により, 遊離珪酸含有率を測定した結果, 14種類に存在が確認され, 普通粉剤では22-34%, FD剤2.7-11%, 水和剤1未満-20%であった。FD剤は粉剤に比べ低値が得られたが, これは平均粒径2μmと超微粉に製法する際, 結晶構造が壊れ非晶質となることに起因すると考える。
スミチオン粉剤, モレスタンおよびダコニールFD剤を対象に, 散布作業における粉塵曝露濃度を肺に沈着しやすい空気力学的粒径7.07μm以下の吸入性粉塵と総粉塵に分粒して測定した。得られた散布作業者の曝露濃度を, 参考に日本産業衛生学会が勧告している遊離珪酸含有率を考慮した許容濃度と比較した結果, 粉剤散布での吸入性粉塵で75倍, 総粉塵で53倍, FD散布での吸入性粉塵で7倍, 総粉塵で3倍と著しい高値が得られた。
これらの結果より, 農薬製剤において遊離珪酸含有の少ない物質を使用することが必要である。また, 散布作業者は粉塵曝露を防護するために, 防塵マスクを装着して行なうことが必要であると考える。

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