日本農村医学会雑誌
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農村における脂質代謝異常の疫学的臨床的研究
林 雅人
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1992 年 41 巻 4 号 p. 991-994

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抄録

我が国農村部の虚血性心疾患訂正死亡率は都市部より低いが, 農村部内でも地域差があり, 都市近郊農村に比べ山間農村で低かった。
栄養調査成績からも都市近郊農村では総脂質, 動物性脂質が多く繊維が少ないなど動脈硬化進展予防の観点から不利な食生活となっていた。なお, 栄養調査成績から得られた脂肪酸摂取量と血中脂肪酸濃度はよく一致していた。
冠動脈造影による冠硬化の程度と血清脂肪酸分析の結果はアラキドン酸 (AA), エイコサペンタエン酸 (EPA), ドコサヘキサエン酸 (DHA), E/A比との間にいずれも有意な相関は認められなかった。しかし冠動脈病変の程度は年齢と有意に相関しており, 一方高齢者程E/A比が高い傾向がみられた。すなわち加齢がEPA, DHA, E/A比と冠動脈病変の関連をマスクしたとも考えられ今後, 多施設の更に多数例で年齢, 性を揃えた検討が必要である。
なお本研究から低カロリー, 低血清アルブミンが冠動脈病変の進展に寄与している可能性を示す結果が得られた。

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