日本農村医学会雑誌
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集団発生したイネ科牧草によるアレルギー性結膜炎について
生田 清美子堀口 佳哉
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1993 年 42 巻 4 号 p. 962-968

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抄録

神奈川県のある地区で毎年5月頃, 児童・生徒に目の痛み, 目のかゆみ等が多発した。昭和63年保健所に調査依頼があり, 検討を続けた結果, イネ科牧草 (イタリアンライグラス) による花粉症としての, アレルギー性結膜炎が強く疑われた。
当該地区には, 多くの住宅と小さな事業所の中に島のように田畑が広がり, 5月には一面牧草が開花時期をむかえる。「アレルギー性結膜炎」が多発するA小学校, B中学校, C高等学校は, この田畑の中にある。平成2年度, 学校における記録等を整理し, 発症者の被害発生状況, 症状等を, 被害発生時に調査票により調査した。
「アレルギー性結膜炎」で保健室を訪れる児童・生徒数は, 毎年3校合計100名以上である。「アレギー性結膜炎」は4月末からではじめ, 5月初旬から中旬に集中して発生する。多発日は気温が高く, 被害発生時刻は昼近い午前中で, イネ科牧草開花時刻に一致する。保健室へ手当にきた児童・生徒のもっとも多い症状は, 目のかゆみ, 充血で, 90%以上に起こる。次に多い症状は流涙で, 約60%に起こる。次に目の痛み, 目の腫れ, 鼻汁, くしゃみが多く, 約30~50%に起こる。目のゼラチン様外観が, 約20%に起こる。再発する児は多く, 毎年発生する児が小学生で14.3%, 中学生で30.8%ある。症状は一過性で, 学校健診における眼科検診に変化は見られない。

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