日本農村医学会雑誌
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農漁村における脂質代謝異常の疫学的臨床的研究
林 雅人渡辺 一藤原 秀臣磯村 孝二高松 道生山根 洋右高科 成良関口 善孝中馬 康男
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1994 年 42 巻 6 号 p. 1180-1188

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抄録

我が国の農村部では虚血性心疾患年齢別調整死亡率は山間農村で低く, 都市近郊農村で高かった。冠危険因子として総コレステロールの意義は都市近郊農村で高いが, 山間農村では明確な有意差を示さなかった。一方, HDLコレステロールは典型的農山村の秋田, 長野, 島根の調査対象地域で虚血性心疾患と負の相関が認められ, 動脈硬化指数とは正の相関となっていた。全国集計した冠動脈写による病変の程度と血清脂質の関係では総コレステロール, LDLコレステロール, 動脈硬化指数, Apo A1, Apo B, Apo B/Apo A1と正の相関, HDLコレステロールと負の相関が認められた。中性脂肪については女のみ正相関していたが, 男では相関がみられなかった。男の中性脂肪は飲酒習慣のためバラツキが大きいことが有意差を示さない一因となっていると考えられる。食習慣は時代, 地域による差の他に年齢による食嗜好の変化があり, 高齢になると魚介類を好む傾向がある。このことは脂肪酸について断面での血清脂肪から動脈硬化のリスクファクターを抽出することを困難にしている。一方, 脂肪酸は前日の食餌の影響を受けやすいので, その影響が少ない燐脂質分画の脂肪酸構成との比較も検討する必要がある。
なお, 本研究から低カロリー, 低血清アルブミンが冠動脈病変の進展に寄与している可能性を示す結果が得られた。

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