日本農村医学会雑誌
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一過疎農村における独居老人の生活実態
小林 昭
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1995 年 44 巻 1 号 p. 22-26

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抄録

大分県の一過疎農村である耶馬渓町の全独居老人を対象に, 特にその生活の満足度に焦点をあてて面接聞き取り調査を行った。その結果, 子供と別居して地元に残っている者が全独居老人の約9割を占め, その理由として独居の気楽さ, 土地への愛着を挙げたものが約7割あった。フェイススケール変法を用いて, 生活全般に対する満足度を尋ねたところ,「非常に満足」あるいは「満足」と答えた独居老人は43人 (47%),「ふつう」と答えた者は46人 (50%) あった。運動機能の障害の有無や病気の有無, あるいは家族関係に関する満足度は, 生活全般の満足度と関係がみられなかった。一方, 交友・近所付き合いの満足度のみ, 生活全般の満足度と関係がみられた。将来への不安に関してq,「非常に不安」と「不安」を合わせても9名 (10%) であり, 独居老人たちの比較的安定した心理状態を示していた。しかし, 将来介護が必要になった時の対処については,「考えたくない。わからない」とするものも32人 (35%) おり, 独居老人の不安定な側面もうかがわせた。

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