日本農村医学会雑誌
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農薬慢性中毒 (障害) の臨床的・疫学的考察
その2. 各臓器障害
松島 松翠
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1995 年 44 巻 2 号 p. 65-73

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抄録

農薬による慢性中毒 (障害) のうち, 肺・気管支障害, 肝障害, 胃腸障害, 血液・造血器障害, 高血圧・血管障害, 代謝異常, 免疫異常について, 臨床的・疫学的な面から考察した。
肺・気管支については, 肺炎像を示すものと慢性進行性肺繊維症を呈するものが主であるが, その他, 喘息, 慢性気管支炎, 肺機能低下等が見られた。肝障害は, 農薬暴露者に多く, 有機塩素剤, TCDDによるものが多く見られた。ワインに残留した砒素の連続摂取で肝硬変を起こした例もある。胃腸障害については, 有機燐剤への持続的暴露によるものや野菜からの連続的摂取によるものがあった。血液・造血器障害については, PCPによる再生不良性貧血やその他の血液疾患が多く見られた。血管障害では, paraquatによる動脈硬化性変化, 代謝異常としてはHCBによるポルフィリン症, 有機塩素剤による高脂血が見られた。また有機塩素剤, 有機燐剤, カーバメイト剤で免疫異常が認められている。
農薬にはそれ自身の毒性の他に, 皮膚粘膜刺激性やアレルギー性を有するものも多く, 人体に対する障害は, それらの複合的影響を考える必要がある。

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