日本農村医学会雑誌
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ブドウ園におけるフェンプロパトリンの散布時と散布後の作業者の曝露評価
桑原 祥浩上田 成子
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1996 年 44 巻 5 号 p. 663-669

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抄録

30aのブドウ園にスピードスプレイヤーにより, フェンプロパトリン水和剤を有効成分として25g散布した時の散布作業者の農薬曝露状況を知るとともに, 散布後の再入園者の農薬曝露状況を検討した。散布作業者の農薬曝露は下肢, 背部および頭部に多く, 推定全身被曝量は散布量の0.003%に相当する783μg (12μg/kg) であった。このことから, 適切な防除衣を着用して作業すれば, 経皮曝露はほとんどないものと考えられた。さらに, 散布終了1時間, 6時間, 1日, 2日, 4日および9日後に別の作業者がこの散布圃場内に20分間再入園した。散布1時間後の再入園にさいしての推定全身被曝量は272μg (4.7μg/kg) であり, 農薬は背部と上腕部にも若干認められたが, その曝露は頭部に集中していた。その後の再入園にさいしては, 葉との接触による頭部の曝露のみであり, 時間の経過とともに曝露量は減少し, 9日後には身体への曝露は認められなかった。農薬散布後の圃場内空気からは, いずれの時点でもフェンプロパトリンは検出されなかった。一方, 葉面フェンプロパトリン残留量は散布1~6時間後には約130ng/cm2であったが, 1日以降に徐々に減少し, 9日後では14ng/cm2となり, この間の減衰傾向は回帰式y (ng/cm2) =-0.5x (hrs) +116で表わされ, その半減期は100時間であった。葉面残留量と身体表面曝露量との間に一定の相関性が認められたことからも, 再入園者のフェンプロパトリンへの曝露は, 主に葉面残留農薬との接触によるものであることは明らかである。即ち, 葉面残留量が27ng/cm2以下に減少すれば身体への曝露が認められなくなることが示された。

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