1996 年 45 巻 1 号 p. 33-36
私たちは, リハビリテーションを通じて, 癌患者の生活の質 (QOL) の改善を目指してきた。
対象は1993年1月より1995年4月までに当院に入院しリハビリテーションを行った癌患者のうち, 遠隔転移や再発を認めた29例で, 男性12例女性17例, 年齢は39から82歳と幅広く, 原疾患も多岐にわたっていた。
患者の身体機能や心理面の状態を考慮し, 理学療法や作業療法・心理療法を適時併用し, 患者の心身両面への援助を図った。
リハビリテーションの効果を検討するにあたり, 便宜上症例を2群に大別した。第1群は, 原疾患の治療や, 合併症のために一時的に身体機能が低下したと思われた13例で, 身体機能の改善をリハビリの主な目的とした。1から2か月の訓練によって, 13例中10例で日常生活動作 (ADL) の自立度の改善が得られ, そのうち9例は自宅への一時退院が可能となった。第2群は心理面への間接的な援助を目指した16症例で, 11例からリハビリテーションに対して肯定的な反応が得られた。否定的であった3例は, 医療全体に対し拒否的であり, 一方, 期間が短く判定不能としたものは2例あった。
以上の結果より, 終末期の癌患者でも, 理学・作業療法によるADL機能の維持改善は期待でき, リハビリテーションは癌患者への間接的な心理面の援助となりうる。よって, リハビリテーションは心身両面で, 癌患者のQOL改善に有用であると思われた。