1996 年 45 巻 1 号 p. 47-51
症例は73歳の男性。平成5年6月に黄疸, 胆管炎, 膵炎で入院し, 対症療法で軽快。腹部USで胆嚢結石を認め, ERCPで傍乳頭憩室を認めたが, 胆管結石は認めなかった。退院後の同年8月に急性胆嚢炎で入院し, 腹腔鏡的胆摘術を受けて退院。同年10月に再び発熱, 心窩部痛出現し再入院。初回入院同様, 肝胆道系酵素とアミラーゼの上昇, 炎症反応を認めた。Lemmel症候群を考え, 緊急十二指腸内視鏡を施行した。傍十二指腸憩室内には食物残渣が充満し, 乳頭を識別できなかった。把持鉗子で食物残渣を除去し, 乳頭を認めた後, 胆管を少量の造影剤で造影し, 結石がないことを確認し, Lemmel症候群と診断した。続いてESTを施行すると膿汁様の胆汁が吹き出した。患者は軽快退院し, 2年後の現在まで再発を認めていない。内視鏡で直接診断し, ESTで治療されたLemmel症候群の報告例は, 我々が検索したかぎり, 自験例以外に見あたらないので報告した。