日本農村医学会雑誌
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白蟻駆除, 防除作業者の有機リン系殺虫剤暴露にともなうリンパ球サブセットの変動
川見 正機海老原 勇川見 昌子
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1996 年 45 巻 4 号 p. 500-508

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抄録

クロルピリホス, ジクロフェンチオン (ECP) といった有機リン系殺虫剤を多量に取り扱い, 繁忙期には慢性的な高濃度暴露があると考えられる白蟻駆除, 防除作業者の職業的暴露集 団において, 有機リン系殺虫剤暴露にともなう免疫系への影響をT, B細胞のより機能的なサブセットの解析から検討した.
その結果, 白蟻駆除作業者, コントロールのグループ平均値の比較において, ヘルパーT細胞とされるCD4+CD45RO+細胞, サプレッサーT細胞とされるCD8+CD28-細胞, サイトトキシック/プレサイトトキシックT細胞とされるCD8+CD28+細胞といった機能的サブセットの細胞比率に有意な変動を認め, 白蟻駆除作業者では, CD4+CD45RO+, CD8+CD28+細胞比率の減少, CD8+CD28-細胞比率の増加を示した. また, pan B細胞とされるCD20+細胞, 活性化に関連するとされるCD28+, CD45RO+細胞比率においても有意な変動が認められ, 白蟻駆除作業者ではCD20+細胞比率の増加, CD28+, CD45RO+細胞比率の減少を示した.
こうした白蟻駆除作業者に認められた機能的サブセットの有意な変動は, 白蟻駆除作業にともなう慢性的な有機リン系殺虫剤暴露による免疫系への影響を反映したものと推察された.

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