日本農村医学会雑誌
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福岡県の農薬中毒死の分析1983年-1987年
加茂 弘子畝 博江崎 廣次
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1997 年 45 巻 5 号 p. 664-670

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抄録

全国的に農薬中毒死が最大数となった1986年を含む1983年から1987年の5年間のデータを用いて, 福岡県における農薬中毒死の状況を知るために, 保健所管内別に農薬中毒の標準化死亡比 (SMR) を計算し, 地域差を検討した。
SMRの計算は, 福岡県の1983~1987年の人口動態死亡テープより保健所別に農薬中毒死亡者数を集計し, 5年間の福岡県の農薬中毒による性別年齢 (5歳) 階級別死亡率を標準として行った。
福岡県の5年間の全農薬中毒死は351例で, 40~50歳代に多かった。また, 全農薬中毒死のうち71%が自殺 (男女比3: 2) で, その割合は男151/223例 (68%), 女99/128例 (77%) で女に自殺の割合が高い傾向があった。
全農薬中毒死のSMRは, 男女ともに筑後地区などの農村部に高率で, 北九州市や福岡市の都市部で低率であった。農薬による自殺のSMRも全農薬中毒死の71%を自殺が占めているので, 男女とも農村部に高率, 都市部で低率となった。全般的に全農薬中毒死が高率のところは農薬による自殺も高率で, 手近に農薬があるために自殺による中毒死が多く従来から言われているように農薬の厳重な保管管理が必要と考えられた。

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